2022/03/23 21:54
1、伊賀焼とは
三重県の伝統工芸品である伊賀焼は茶陶として有名です。名品として水指の「破れ袋」や「鬼の首」などが残っています。
現在は土鍋や日用雑器などが中心に作られているようです。
伊賀焼は土を高温で何度も焼成し、土にかかった灰が、土の成分と反応して釉薬になる
いわゆる自然釉と土味を活かした荒目の肌と豪快な形が特徴です。
鮮やかで深みのある緑色のビードロ釉が有名です。
2、忠央窯の伊賀焼
訪問させていただいた忠央窯には、茶陶、日用雑器など様々なバリエーションの伊賀焼が並んでいました。
伝統的な伊賀焼は上記の通りのイメージですが、こちらでは代表的な緑ビードロ以外にも青色や青ビードロ、
朱赤やピンクがかったものまで、更に手びねりで成形されているため厳密には一つとして同じ形はなく、
正に多種多様でした。
また、青や朱赤は、伊賀焼では忠央窯独自の色で他にはないものであるとのことです。
土味を活かした忠央窯独自の技法である、岩に苔むしたような雰囲気が特徴の苔肌(こけはだ)で作られた、
主に花器の伊賀焼がありましたが、その作品も実際に触ってみました。
通常の伊賀焼より更にザラザラの肌で、その苔むした雰囲気と相まって風流がありました。
3、忠央窯五代目秋野宏和氏にお話を聞いてみて
秋野宏和氏とお話をさせていただいた印象は気さくで温和な方です。
同時に、伊賀焼の話を熱心にされる氏からは、熱く、良い意味で誇りを持って仕事をしているという印象を受けました。
「何故これ程多彩な伊賀焼を作っているのか」、その理由も聞かせてもらえました。
その理由は、多彩な作風の焼物が相互に引き立てあい、楽しく、飽きさせないようにする。
伝統的な技法や同じ色だけでは、どうしても単調となりがちであり、そこに新たな要素をプラスすることで新鮮さを加えていく。
また、技法や色合い、土味にも制作者としてのコンセプトがあり(例えば苔肌は野の花を引き立てるというコンセプト)、
焼き物の独自性が生まれ、一味違った作品を楽しめるものにする。伊賀焼を作るにあたってそこを大事にし、
またより良い方法を模索し続けているからとのことです。
秋野氏は、伊賀焼の伝統技法を根にしてそこにオリジナリティを加えることで、忠央窯の
伊賀焼をグレードアップさせ続けています。
その努力と工夫から生まれる伊賀焼は、焼物好きをきっとわくわくさせてくれます。
これからも忠央窯で作られる伊賀焼はより多彩で楽しい焼き物となっていくと確信しております。